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2022年06月02日

受動喫煙をなくしましょう!

令和元年7月1日に、改正健康増進法の一部が施行されました。受動喫煙による健康影響を防ぐため、受動喫煙対策を努力義務としたこの法律の施行によって、受動喫煙に関する関心が高まりました。
望まない受動喫煙を防止するため、学校や病院などの公共の施設やオフィス、工場、飲食店など、さまざまな場所で取り組みが進んでいます。

みなさんの身近なところではどうでしょうか。
5月31日は「世界禁煙デー」でした。禁煙を進めるとともに、受動喫煙についても考えてみましょう。

「受動喫煙」とは?

たばこの煙には、フィルターなど吸い口から喫煙者が吸い込む煙「主流煙」、喫煙者が吸って吐き出した煙「呼出煙」があります。また、火がついた部分から立ち上る煙を「副流煙」といいます。喫煙者がいる空気中には、呼出煙と副流煙が混ざって漂っています。本人は喫煙しなくても、身の回りのたばこの煙を吸わされてしまうのが受動喫煙です。

煙に含まれる発がん性物質などの有害成分は、主流煙より副流煙に多く含まれるものがあります。室内での喫煙は、副流煙に含まれる有害物質が一気に室内空気に拡散し、喫煙者を含む多くの人の健康に影響します。

たばこの煙の影響

受動喫煙との関連が「確実」と判定された肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)の4疾患について、超過死亡数を推定した結果(※1)によると、わが国では年間約1万5000人が受動喫煙で死亡しているとされます。
受動喫煙による肺がんのリスクは1.28倍、虚血性心疾患のリスクは1.3倍、脳卒中のリスクは1.24倍とするデータもあります。さらに受動喫煙は子どもの呼吸器疾患や中耳炎、乳幼児突然死症候群を引き起こすことが指摘されています。また、妊婦やその周囲の人の喫煙によって、低体重児や早産のリスクが上昇します。

※1 片野田耕太(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」平成27年度報告 より

受動喫煙による健康への影響
  成人の場合 妊娠出産の場合 小児の場合
因果関係を推定する証拠が十分(確実):レベル1
  • がん:肺がん
  • 循環器の病気:虚血性心疾患、脳卒中
  • 呼吸器への急性影響:臭気・鼻への刺激感
  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)
  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)、喘息の既往
証拠は因果関係を示唆(可能性あり):レベル2
  • がん:鼻腔・副鼻腔がん、乳がん
  • 呼吸器への急性影響:急性の呼吸器症状(喘息患者・健常者)、急性の呼吸機能低下(喘息患者)
  • 呼吸器への慢性影響:慢性呼吸器症状、呼吸機能低下、喘息の発症・コントロール悪化、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 低出生体重・胎児発育遅延
  • 喘息の発症・重症化、呼吸機能低下、中耳の病気、う蝕(虫歯)、学童期の咳・痰・喘鳴・息切れ

(出典) 厚生労働省 「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書 2016」より

表中のレベル表記は、米国 Surgeon General Report で用いられているレベル判定(レベル1~レベル4)に応じて4段階に総合評価したものです。

  • レベル1 科学的証拠は因果関係を推定するのに十分である
  • レベル2 科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない
  • レベル3 科学的証拠は因果関係の有無を推定するのに不十分である
  • レベル4 科学的証拠は因果関係がないことを示唆している

加熱式たばこの煙は大丈夫?

加熱式たばこには、いろいろな種類があります。これら加熱式たばこの煙(正確にはエアロゾル)にも、有害な化学物質は含まれています。加熱式たばこの煙に含まれる有害成分量は、紙巻たばこ煙よりも少なくリスクが低減するとされますが、その説は必ずしも正しいとは言えないようです。加熱式たばこ煙の方が多い成分があったり、まだ測定や評価がなされていない成分も多かったりするなど、根拠が不十分とされているからです(※2)。

在宅勤務やステイホームにより、自宅で過ごす時間が長くなっています。ご家族の健康を考えるのであれば、禁煙にチャレンジしましょう。

※2 WHO(世界保健機関)「たばこ規制枠組条約(FCTC)第9回締約国会議資料」より

一番の受動喫煙防止策は禁煙!

改正健康増進法が施行されて以来、受動喫煙防止の対策は進められていますが、まだ十分とは言えません。政府でもWHOが提唱するように、「喫煙室を設置することなく、屋内100%禁煙化を目指すべき」としています。
1人でもたばこを吸っている人がいたら、家族全員の健康が害されることになります。たばこを吸う夫の妻は、夫からの受動喫煙がない人に比べて、肺がんのリスクが1.3倍になるとされます。
また、親が喫煙している場合、子どもの尿から大量のニコチン代謝物が検出されたというデータもあります。
同じ空間では、完全にたばこの煙をシャットアウトすることは不可能です。大切な家族や周囲の人の健康を守り、何よりご自身の健康のためにも、禁煙が一番の対策です。

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