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2023年02月15日

住まいの温度と健康について考えてみましょう。

今年の冬は燃料価格の上昇を背景に、住宅内の断熱に関する話題が多く取り上げられました。断熱性が高く快適室温の住宅は、冬のヒートショックを防ぐとともに、夏の熱中症予防にも効果があるとされています。

世界保健機関(WHO)は、2018年に「WHO 住宅と健康ガイドライン」を発表し、寒さ対策(冬季室内温度18℃以上)と住宅新築時と改修時の断熱工事、暑さ(室内熱中症)対策、住宅の安全対策などの推進を各国へ勧告しています。
日本でも国土交通省が「住宅内の室温の変化が居住者の健康に与える影響とは?」をテーマに調査を進めるなど、近年、住宅内の温度と健康について、さまざまな調査が進んでいます。

みなさんのお住まいは、快適温度でしょうか。
住む人の健康にやさしい住環境を考えてみましょう。

住宅の室温と健康の関係は?

住宅の室温は、住む人の健康状態にさまざまな影響を及ぼします。住宅の断熱性能を向上して快適な温熱環境を維持することで、健康への好影響が期待できるとされています。
WHO(世界保健機関)は、寒さによる健康影響から居住者を守るために必要な室内温度として、18℃以上を強く勧告。特に、高齢者や慢性疾患患者がいる住宅は、18℃以上の温度が必要となる場合もあるとしています。
英国の調査では、室温が16℃以下の環境は高齢者に関して、呼吸器疾患や心血管疾患など大きな健康リスクがあると発表。また、冬季に室温が10℃以下になると心臓発作、脳卒中などの心血管疾患による死亡率が50%上昇するとしています。これは英国だけでなく、日本でも冬には浴室でのヒートショックが増えるなど、同様の傾向があります。

<<住宅の環境による健康への影響例>>

寒い室内の影響① 血圧上昇に影響、心疾患の危険性もアップ
寒い室内の影響② 住居内の温度差によるヒートショックのリスクが上昇
寒い室内の影響③ 結露が発生し、カビ・ダニによるアレルギーなどが発症
暑い室内の影響  熱中症の危険性が上昇

東京都の平均気温と23区内における入浴中の死亡者数(2019年)
東京都の平均気温と23区内における入浴中の死亡者数

出典:東京都環境局 健康にもいい省エネ住宅サイト より

住宅の室温と運動量の関係は?

室温の影響は現在の健康だけでなく、将来の健康にも少なからぬ関係があります。
国土交通省の調査では室温が約2℃程度上昇した場合、そこに住む人たちの活動時間が増えてくることが示されています。
厚生労働省では、糖尿病・循環器疾患などの予防や健康寿命を伸ばす観点から、現在の身体活動量を少しでも増やすことを世代共通の方向性としています。「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」との方針で活動を推進中です。住宅の室温を上昇させることができれば、身体活動の増進にも寄与することが期待されます。
また、高齢者施設では室温が1~2℃高くなると、要介護度の悪化を抑制できるのではないかとされる調査結果も出ています。

室温を適温に保ち活動量が増えることは、生活習慣病の予防に役立ち、将来的な認知症や介護の予防にも有効な対策といえそうです。

+10(プラス・テン)から始めよう!
+10(プラス・テン)から始めよう!

温度以外にも重要なのは「換気」「湿度」

住宅環境で大切な要素は、温度だけではありません。「換気」「湿度」にも、注意が必要です。

空気を入れ換える換気

室内の換気は、新型コロナウイルス感染症で注目されました。
換気は新鮮な外気を取り入れ、室内の汚れた空気を入れ換えることです。感染症のウイルスだけでなく、建材や家具、防虫剤、タバコなどから発生する化学物質を排出し、シックハウス対策にも役立ちます。

カビやダニの発生を防ぐ湿度コントロール

建築物における衛生的環境の確保に関する法律では、相対湿度の管理基準値は40%から70%と定められています。
湿度が高いと、カビや雑菌が繁殖しやすくなり、アレルギーの原因ともなります。また、湿度が高い状態では汗が出にくく体温が体内にこもるため、熱中症にかかりやすくなります。
逆に湿度が低すぎれば、粘膜が乾燥してウイルスに感染しやすくなる・肌が乾きすぎるなど、健康を損なう恐れがあることにも注意が必要です。

厚生労働省では、インフルエンザの対策として湿度を50〜60%に保つよう推奨しています。特に高齢者や幼児などがいる家庭では、十分な湿度管理を心がけましょう。